就職活動において超高倍率な業界の一つが「食品」。その中でもビール業界は大人気ですよね。
日本の企業の平均年収ランキング上位も占めています。
引用:業界動向 より
多くの人が志望する分、大切になってくるのが志望理由の「差別化」です。
志望理由を差別化するためのポイントは2つです。
・各社(アサヒ・キリン・サッポロ・サントリー)の違いを抑える
・ビール市場に関する知識を身に付ける
ぜひこの記事を読んで、ポイントの理解を深めてみてください。
各社の違い
ではまず初めに各社の違いについて説明していきます。どんな戦略を取っているのかが各社の違いを理解するカギになります!
キリン:クラフトビールへの注力を見せる
業界シェア1位のキリン
他3社に比べて、クラフトビール事業に注力しており、どんな場所でもクラフトビールが楽しめるTap Marchéといった新しいサーバーにも着手しているのが特徴。
◆タップマルシェについて
また地域社会への貢献意識や社会課題への解決意識(SVC/SVR)が高いことも特徴であり、医薬・バイオケミカル分野にも注力をし始めています。(協和キリン株式会社)
課題点としては、収益のよくない海外事業(アジア・オセアニアなど)の再編と、ビール事業での首位奪還などが挙げられる。
強み:マーケティング力
キリンHDはマーケティング戦略に特徴がある。キリンは、マーケターの外注を行っており、元P&Gのマーケターである山形さんを登用し、『競合他社と競争しないマーケティング』を掲げているP&G出身のマーケターが昨今様々な企業において活躍している。例えば、 USJをV字回復させたり、マクドナルドを再掲させたりしている。ビール以外の飲料や薬品。ビール業界において、マーケター(それもそのトップ)を外注するのはすごく珍しいことである。
また、ビールや医薬事業で培った発酵バイオの技術を生かし、ヘルスサイエンス事業を新たな柱に育成しようとしている。今回の新型コロナウイルス感染拡大初期の医療現場の混乱から患者さまの通院が制限されたことによる影響を多少受けたものの、事業利益は対前年3パーセント増で食領域に比べ新型コロナの影響は小さく抑えられている。
弱み:収益性
1つ目は、国内でのビール事業のシェアが下がりつつあることである。2020年上半期、11年ぶりにアサヒから首位奪還できたものの今後も油断は許されない。
(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61483740U0A710C2000000/)
2つ目は、収益のよくない海外事業である。アジア・オセアニア事業をどのように再編していくかがカギとなる。今までは、22あるブランドに分散投資していた。キリンがどのようなブランドか消費者に伝えきれないなど、戦略が不在だった。営業現場は新商品が欲しいと望みがち。だが、新発売の商品は(競合の)売れ筋商品とどうしても同質化してしまう。こうした悪循環が続いていた。
サントリー:シェア2位
業界シェア2位のサントリー
他3社に比べて、多種多様な酒類・飲料を販売しているのがサントリーの特徴。
「飲料メーカー」というよりは「クリエイティブ」の会社、というイメージ。
サントリーの初代社長である鳥居信治郎さんが言った「やってみなはれ」の精神が社員にも根付いていて、失敗を恐れずに挑戦を重んじる気風がある。マーケティング戦略・広告戦略がうまい。
課題点としては他社と比べてビール類が弱いこと。
強み:クリエイティブな商品ラインナップ
クリエイティブさを特徴とした商品のマーケティング、そして「やってみなはれ」の精神に基づいてそれをやりきる力がある。その結果、消費者のニーズを理解した分かり易いコンセプトのあるクリエイティブな商品を多くヒットさせている。例えば、それまでストロング系が主流であった缶チューハイを、若者のアルコール離れの影響を受けて「少ない度数で軽く酔える」をコンセプトにした「ほろよい」や、「居酒屋の雰囲気を自宅でも楽しめる」をコンセプトにした「こだわり酒場のレモンサワー」などがある。酒類以外にも、それまでは一度開けたら飲み切らなければならない缶が主流であったコーヒー飲料を、忙しい時代の流れに合わせてペットボトルで販売した「クラフトボス」などもある。洋酒(ウイスキー)などの売り上げが高く、基盤がしっかりしているため、いろいろな商品に挑戦できるのも強みである。
弱み:酒類以外の事業拡大
事業が手広すぎる故に、ビール以外の商品が弱い。酒類以外事業は年々売り上げを落としている。また、買収した「ジムビーム」や「メーカーズマーク」などのスピリッツ系のお酒はあまり日本の家庭向けとしてはなじみがない点も課題である。
アサヒ:シェア3位
他3社に比べて、ビール事業にとにかく注力しているのがアサヒ。
お話を伺う中でも働かれている方々のビールに対する情熱やこだわりがとても強い人が多くいた。
他社と異なり、今後もビール類を主軸に売り上げを伸ばしていこうとしている。
強み:スーパードライの圧倒的ブランド力
ビールの圧倒的なブランド力と販売網の多さ。ビール・新ジャンルどちらも長年シェア1位であった。また、業務用市場で強く、売り上げの半数が業務用である。(つまり、飲食店で沢山起用されている。)後述の酒税法改正により、『スーパードライ』の6缶パックで本体価格が1000円を切る店舗も出てくるため、今後は家庭用においても売り上げを伸ばすのではないか。アサヒビールの塩沢賢一社長は「後もビール第一でいく方針である」と述べている。
弱み:ビール事業以外への展開
ビール事業だけが強いということは、すなわちRTD類は弱いということである。RTDといえば「ほろよい」や「ストロング」など他社製品が浮かびがち。また、ビールに注力しすぎている為価格が高若者や女性のビール離れが今後も続く中で、その風潮に対応できるかどうかがカギとなる。コロナで所謂、「宅のみ」が増え、低価格の他社の新ジャンルにもっていかれている。前述のように、業務用市場で強いということはつまり、家庭用市場には弱いということである。実際、2020年上半期には11年ぶりにキリンに首位を奪われた。
サッポロ:シェア4位
他3社に比べて、規模感は一番小さいのがサッポロ。
しかし、エビス・黒ラベルと、ブランドのメインとなるビールが2種類あるのがビールメーカーとしての強みである(⇔他3社にはメインブランドは1種類しかない)。
栽培方法や地域密着、という点にビールづくりへの愛やこだわりを感じることができる。
また、恵比寿ガーデンプレイスという不動産事業も行っており、不動産事業と連携した営業を行っているのがポイント。
強み:地域との密接なつながり
ビールへのこだわりが強く、「エビス」・「黒ラベル」と、ブランドのメインとなるビールが2種類あるのがビールメーカーとしての強みである(⇔他3社にはメインブランドは1種類しかない。(例)サントリー:プレミアムモルツ、アサヒ:スーパードライ、キリン:一番搾り)。
そして、地域との連携・根付きが強いのも特徴である。上に挙げたサッポロの商品はどちらも、その商品名に地名が含まれている。地域で「愛される」ビールなのである。サッポロのビールは、根強いファンを有しており、縮小気味であるビール業界の中で売り上げを変わらずに保持しつづけているのサッポロだけである。
また、恵比寿駅周辺の不動産事業も行っており、業務用営業で、新たな店舗を出したいという相談を受けたら土地を紹介から請け負えるのが特徴である。お客さん(店舗)にとっても低価格で土地を決める事ができ、新規店舗でもサッポロビールを出してもらうことができる。
弱み:新商品の不足
サッポロもビール事業頼みすぎて、RTD事業が弱い。「男梅サワー」「キレートレモンサワー」などがあるが他企業のRTDよりも存在感が薄い。
また、強みで挙げたような持続性はあるが「成長性」がない。マーケティングや広告の打ち出し、インパクトを出すのが上手ではないため、新商品が生まれにくい。そして、生まれてもヒットしにくい。中期経営計画では、「ワイン事業を第二の柱に」と掲げているが、日本のワイン市場は競合が多く、サッポロの参入前から消費量が上がってっており、また売上規模もそこまで高くないので期待はできない。
https://www.sapporobeer.jp/hanjo/gyokai/topics/post1300.html (サッポロビール株式会社 会社情報)
https://www.kirin.co.jp/company/data/marketdata/pdf/market_wine_2019.pdf (ワイン市場の推移 キリンビールより)
ビール市場について
若者・女性のビール離れ
最近よく耳にする、若者・女性のビール離れ。少子高齢化や人口減少などの影響を受けて、例年ビールの消費量は下がりつつあります。では、ビール業界の未来は暗いのか…?そんなことありません!以下の2点から、ビールメーカーが必ずしも不調でないということがわかります。
ビール以外の酒類の強化
RTDという酒類のジャンルを知っていますか?RTDとは『Ready To Drink』の略称で、一般的にいう缶チューハイなどの酒類を指します。若者のビール離れは進んでいますが、その一方で若者をターゲットとしたこのRTDの売り上げは年々あがっているのです。その結果として、飲酒人口は減少しておらず、ビールメーカーがRTDの売り上げを伸ばすことで、売り上げのバランスが保たれているのです。
また、RTDだけでなく例えばサントリーはクラフトボスやキリンの午後の紅茶など、ノンアルコール飲料にも注力して売り上げのバランスを保っている企業もあります。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2019/pdf/039.pdf
モノ消費→コト消費
みなさんも耳にすることが増えた言葉の一つだと思います。
モノ消費は、商品そのものに価値を見出し、購入することですが、コト消費は、モノを所有することではなく“体験”に価値を見出します。そしてこの消費行動の変化による消費者のニーズはビール業界にも影響を与えています。
ビールに体験価値を見出す、とはいったいどういうことなのでしょうか。各企業が様々な取り組みを行っていますがその中から2つ紹介します。
1つは、「ビールを選ぶ」という体験を楽しむことです。
クラフトビールは種類が豊富で味や色・香りの多様性に富んでいます。そんな多種多様なクラフトビールを飲み比べて、お気に入りのビールを見つける、という体験ができるのです。
この消費行動の変化を受けて、例えばキリンは専用のディスペンサー一つで4種のクラフトビールを提供する仕組み「タップ・マルシェ」を生み出しました。また、サッポロもホップの育種・品種改良を積極的に行い、これまでに10品種以上の個性的な香りのあるホップをつくり出し、ビールを選ぶ楽しさの提供に注力しています。
2つは、「ビールサーバーのある暮らし」という体験を楽しむことです。
普通、家でビールを飲むときは缶ビールもしくは瓶ビールを飲むと思います。グラスやジョッキで飲むといっても缶や瓶から次ぐ事になります。サーバーからジョッキに注がれたビールは飲食店で飲むもの、というイメージがありますね。
そんな中でキリンが生み出したのは、「サーバーがある暮らし」を提供する『Home Tap』です。専用サーバーをレンタルし、自宅でサーバーからジョッキに注いだビールを楽しむことができるのです。
「ビールサーバーのある暮らし」という「体験」を提供しています。また、ビールの酒類としても期間限定ビールが家に届くので、先ほどあげた「ビールを選ぶ」という体験も同時に提供しています。
酒税一本化
ビール業界を志望するなら押さえておくとよいのが「2026年に行われる酒税一本化」です。酒税一本化を根拠に志望理由を述べると、面接官の方から「よく調べてきているね」と何度もほめていただきました。
簡単に説明すると、今まで酒類の種類によって異なっていた酒税をすべての種類で一律にする、ということです。
今までは各種類にかけられていた酒税は以下の通りです。
ビール:77円、発泡酒47円、新ジャンル28円
これらすべての種類の酒税が統一されるということは、値段として、
ビールは安くなる・発泡酒は変わらない・新ジャンルは高くなる ということになります。
つまり、今まで発泡酒や新ジャンルを飲んでいた消費者のビールへの流入が見込める、というわけです。だからこそ、2026年までにビールをどこまで強化できるか、また発泡酒や新ジャンルを通していかにブランドのファンを作れるか、の2点が大切になってくるのです。
ビール業界の営業
量販店営業
量販店営業とはチェーン展開するスーパーマーケットやディスカウントストア、コンビニなどで自社製品の売り場拡大や売り方の提案を行う営業です。
そういった店舗ではビールが売られる棚の数は限られているので、4社の中でいかに自社のビールを多く、そしてお客様の目に留まりやすい位置においてもらえるかがキーになります。
他社製品より自社製品を置くことの店舗側のメリットを論理的に伝え、採用してもらう必要があります。しかし、その「バチバチ感」が負けず嫌いの人や結果にこだわる人のやりがいになるそうです。
市場の分析力、説得力を活かして成績を挙げたい人におすすめです。
業務用営業
業務用営業とはレストラン・居酒屋などの飲食店や酒販店で自社製品を扱ってもらえる(提供してくれる)お店の数を増やし、その店舗のさまざまな課題を見つけ、一緒に解決し繁盛させるのが主な役割です。
飲食店の経営者からすれば見ず知らずの人ですが、店舗をよりよくする為の提案で信頼を勝ち取り、自社製品を扱ってもらえるようになるところにやりがいを感じるそうです。
飲み会が好きであったり、人と人がビールを通してつながる場の経営に携わりたかったりする人におすすめです。
選考対策
ESや面接では基本的に学生時代のエピソードや志望動機などオーソドックスな質問をされる傾向があります。実際、選考を進める中であまり特徴的な質問には出会わなかったです。
唯一、キリンのESと動画面接で「キリンの企業理念である熱意・誠意・多様性を体現したエピソードを紹介してください」という特徴的なものがありました。以下のキリンの採用サイトを参考にして、それぞれの単語がどのような意味をもち、キリンの中でどのように大切にされているのか考えて、回答を作成すると良いと思います。
また、ビール業界だけでなく、飲料・食品業界全体の選考を受けていて感じたのは、「市場をどのように分析しているか」、そして「その分析結果に対してどのような意見を持っているか・解決策を提示できるか」という視点の質問が多かったように感じます。例えば、「コンビニやスーパーでビールが売られている棚を見て感じたことはあるか」という質問や、「文化祭で焼きそば屋を出店したが、全く売れませんでした。次年度の出店に向けて団体で話し合いが行われた際、あなたはどのような提案をしますか。」などの質問がありました。
昨今、「若者のビール離れ」という言葉をよく聞き、ビール業界の面接においても言及する就活生が多くいました。しかし、私自身の同世代の身の回りの人でビールを飲まない人はごく少数に感じていました。「本当に若者はビール離れしているのだろうか?」や「一人当たりの飲む量が減っているだけかもしれない!」など、ビール市場に対する自分なりの分析や考察を持っておくと良いと思います。
最後に
ここまで読んでくださってありがとうございます!どうですか?なんとなくビール業界や各企業のことを理解することはできましたか?
ビールが大好きな人、お酒は得意じゃないけど飲み会の雰囲気がなんとなく好きな人、反対に飲み会は得意じゃないけどひとりでゆっくり飲むのが好きな人、、、ビール業界を志望するきっかけはそれぞれだと思います
ビール業界を志望するみなさんの志望動機を考えたり、業界研究だったり、受ける企業を選んだり、、、何かのきっかけになれたらうれしいです。
ちなみに、私がOB訪問する中で聞いた話だと、ビール業界で働く方々の中にもお酒を一滴も飲めない人って意外といるらしいです(笑)
「お酒苦手だから…」「あまり詳しくないから…」などと考えず、ぜひ、挑戦してみてください!
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